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青い魚
superultrasentimentalist

負けるなんて言葉に
胸を掴まれたくなかった

青い魚が無表情に
まな板の上から宙を見ている
乱れた刃先を鋭く研いで
壁に向かって突きつけてみる

不機嫌な空は部屋を照らすこともなく
ただいるだけの二人には少し暗すぎた

手に張り付く無数の鱗は
抵抗するように硬く尖っている
薄く血の滲んだ指先を
舐めようとしてやめた

呼吸をするように汚れた壁を見ていると
何かを謝らなくてはならないような気がした

冷たい水で手を洗い
青い魚の鱗は流れた
生き返るのを待っていたら
魚は目玉をこちらに向けた

不器用なのだと呟いた
せめて笑ってほしかった

魚の嘆願を聞き届けるには
既に哀れみを削りすぎていた
腹に包丁を差し入れるとき
優しい人の姿を想像した

行き過ぎたわがままだと
きっと自分だけが思っていた

透き通るようにスライスする
この赤は何の色だろう
誰かの髪をなでるように
魚の身に指を這わせる

許してほしいと願いながら
許されない理由を数え上げている

重たい皿に魚を並べる
ラップフィルムは供養の印
青い魚は奇妙なほどに
力なく横たわっていた

違うという言葉も知っていた
胸を切り裂く刃になるのだろう

冷蔵庫を閉じれば
もう魚とはお別れ
さよならの前に
チョコレートを一口かじった
(2006.02.01)

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