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愛しているよ、美羅ちゃん。
Love, Love You

 風の通りがやけにいい日は、人生の節目になるらしい。
 その日にいっぱい空気を吸い込んで、今まで生きてきた分の汚れをきれいにするんだって。

 美羅ちゃんが消えた。

 学校の裏でお花を摘んでこようか、それとも山に行ってお水を汲んでこようか。
 そう言って、歩いて出かけて、そのまま帰ってこなかった。

 風は十分豊かに吹いていたし、空は突き抜けるように高かったから、美羅ちゃんが消えるには絶好の日だったのだと思う。

 あたしの足元には、葦花ちゃんがいる。

「美羅ちゃんはね」

 ぷっくりとした唇をかすかに開いて、葦花ちゃんはあたしの顔を見上げる。

「ずうっとずうっと前から、お空を見ていたの」

 意味はわかっていないだろうけれど、それでも葦花ちゃんはじっと聞いている。

「美羅ちゃんの神様も、おばあちゃまも、みんなお空にいるのだから。だからずうっと上を向いていた。いつも、いつも、空ばかり見ていて」

 ちょうど今の葦花ちゃんのように。

「美羅ちゃんは、もう首の後ろが疲れちゃったんだって」

 あたしは小さく屈み込んで、葦花ちゃんと視線の高さを合わせた。

「ちょっとゆっくり待ってみよう。美羅ちゃんが、葦花ちゃんのことをずうっと見ていられるようになるまで」

 葦花ちゃんの小さな手を両手で握る。

「葦花ちゃん、ゆっくり待ってみよう。美羅ちゃんをしばらく休ませてあげよう」

 葦花ちゃんは、くっとまぶたを上げて、瞬きを止めて、あたしを見据えた。
 そのしぐさは美羅ちゃんにとてもよく似ていた。

 ああ、葦花ちゃんはきっと大丈夫だな、と思って、あたしはいなくなった美羅ちゃんに向かって微笑んでみせた。
(2007.10.01)

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