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パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト 03
The Full Moon Night by Personality Sakaki -3-
あ、時間が迫ってきました、パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト。最後に、プレゼント・クイズの正解を発表です。クイズなのに正解発表しちゃったら、意味ないよね。でも、これは最後まで聴いてくれたあなたへのお礼。
さあて、俺のついた嘘、何だったと思う? サカキの言っていることは全部でたらめだって? 放っておいてくれ。
結構皆さんね、うがった見方をされているようですよ。気が早いですけれど、今までに寄せられたご意見を紹介しましょう。
「サカキは本名じゃない」。あのねぇ、これ、最初に言ったでしょう。居酒屋の名前ですってば。ちゃんと聞いていない人、駄目だぞ。「サカキはラジオパーソナリティじゃない」。まあ、これも言ったようなもんだよね。初めてのパーソナリティっていうのも、会社員だっていうのも言ったでしょう。今もね、DJとパーソナリティの区別がつかないんだ。これ、全然違うんですか? おんなじようなもの? どっち?
まあ、だから、二つとも正解の嘘ではありません。正解の嘘って、変な言葉ですね。でも、今までお付き合いいただいた時間で、皆さんは嘘について考えてくださったことと思います。もっと、楽しい嘘、ユニークな嘘も紹介するつもりだったんですけど、ちょっと暗いのばっかり選んでしまいました。嘘をつくのってつらいんだなぁ。こんなにも、つらいんだ。
では、正解発表の前に……おかしいと思いませんでしたか。俺の進行が下手すぎる? それはまあその通り。設備もあまりに悪い。全編、俺の口でお送りしたからね。音楽もないし。でも、俺が言いたいのは、リスナーの投稿を発表するところ。言わなかったよね、俺。東京都の太郎さんからの投稿です、みたいなこと。一回でも、投稿はこちらまでお送りください、なんてメールアドレスやファックス番号を言った? あと、もっと変でしょ、CMが全然入らなかったの。何とかかんとかの提供でお送りしました、って一切ない。こういうの一つ一つ、喋りながら気付いて、しまった、って思っていたんですよ。致命的だもん。ラジオ番組として、致命的。
お聴きのあなた、ちょっとラジカセをご覧ください。あ、ラジカセじゃないか。CD聴けるもんね。でも、MDは使えない。古いタイプなんだ。新しい機械は怖い、って言うから。別に、感電するわけじゃないのにね。だから、CDラジカセだ。
さあ、ちょっと見てみて。どこにランプがついている? ラジオ? 違うよね。カセットのところだ。あなたは、このラジオをカセットに録音していたの? そういうことはないよね。
あなたが聴いていたのはラジオじゃない。カセットから流れる音声。俺が昨日の夜中、うちで録音してきたもの。
あなたの隣にいる奴の顔を見てごらん。真っ赤じゃないかい。いつからそうだった? たぶん、最初からだろうね。あなたはいつ気付いたかな。気付いて、おかしい、と思ってくれたのかな。
あるいは、あなたは一番最初から答えを知っていたのかもしれない。俺のついた嘘、これがラジオ番組なんかじゃない、あなたへのいたずらだっていうこと。俺の声、わかった? 俺、自分で聞いて変な声だと思ったもん。あなたは気付かないかもしれない。それに賭けてクイズにしてみたんだけど、どうだったかなぁ。ひょっとしたら、俺がラジオをつけようと言い出したところで、変に思っていたのかもね。
ああ、恥ずかしい。もう、恥ずかしくて仕方ないもん。これを聴いている俺、どうよ? もう、全部自作自演。ああ、嘘についての投稿はね、ラジオ局に勤めている友達から没になったやつを横流ししてもらったの。内緒内緒。ばれたらまずい。
ごめんなさい。俺、正直、途中でわからなくなっちゃった。何を言いたくて、こんなことやったんだっけ。
あなたは、つらかったんでしょうね。俺が想像していたのより、きっと、はるかにつらかった。旦那さんに、ずっと嘘をついているでしょう。とても、長い間。あなたと俺が出会ってから。
あるいは、あなたは、俺に嘘をついている? さっきの投稿に一つあったよね、読んでいて自分のことみたいにどきりとした。本当は、俺のことが好きだなんて嘘? 気を使ってくれたの? 旦那さんのことを、やっぱり一番大切に思っているんじゃないの? 俺、そんな気がして仕方ないんだ。
わからない。ただ、自分で嘘をつくのはつらいけれど、人に嘘をつかせてしまうのは、もっとつらいみたいだ。正直になって、と頼むのもわがままかな。俺があなたの近くにいる限り、あなたは嘘をつき続けないといけない。その相手は旦那さんかもしれないし、俺かもしれない。きっと、二人ともに、なんだろうね。それとも、あなたは俺が考えている以上にたくさんの嘘を重ねてきたんじゃないかな。そう思うと、俺、悲しいよ。こんなに悲しかったことはなかった。
このテープ、流すのやめようかな。ううん、やっぱりあなたに聴いてもらう。嫌だな。逃げ出したいよ。これをあなたに聴かせたら、もう全部終わっちゃうんじゃないかな。ああ、逃げたい。このまま窓から飛び降りたい。でも、最後まで聴いて。
俺は、あなたを笑わせたくて、こんな悪ふざけを始めた。でも、駄目だ。俺、これ以上あなたのそばにいられる自信がない。ねえ、俺、あまりにもあなたを傷付け過ぎたんじゃないかな。気付いた。気付いたんだからね。ああ、憎いなぁ。俺にこの投稿を渡してくれた奴が憎い。これ、逆恨みね。本当は、こんないたずらに協力してくれたこと、感謝している。
感謝は、何よりもあなたに向けないといけない。俺の悪ふざけに、ずっと付き合ってくれてありがとう。それとも、とっくにラジカセの電源抜いちゃっている? だったら、俺は直接言うよ。ありがとう。それから、今までも。俺のために、嘘をつき続けてくれてありがとう。
あなたはクイズに正解したかもしれないけれど、ごめん、何にもあげられない。この番組が終わったら、俺は出て行くよ。旦那さんがいない日に一緒にいたいって、わがままを言ってごめん。でも、嬉しかった。だから、お願い、もう嘘をつかなくていいんだよ。どうか、つかないでほしい。俺、自分勝手の王様になれるんじゃないかな。王様? きっとそんないいものじゃないね。自分勝手の奴隷かな。
ああ、時間がない。カセット、片面三十分のやつなんだ。もうテープが巻き終わりそうだよ。やばいやばい。情けないなぁ。情けなくて、涙が出る。
願わくは、これを聴いているあなたのこれからに、幸多からんことを。
パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト。このセンスは、やっぱりひどかったね。俺の帰り道に、満月は見えるかなぁ。せめて、いい夢を。バーイ。
(2006.03.18)
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