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パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト 02
The Full Moon Night by Personality Sakaki -2-

 ようし、サカキのDJっぷりも、だいぶ板についてきただろう? え、ああ、そうか、パーソナリティだ。コツはね、恥じらいを捨てることと、お酒をちょっと入れること。これ、自分で聴き返す勇気ないもんなぁ。赤面ダイブしちゃうよ。パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト、二つ目のコーナーに参ります。
 《僕らの辞書、嘘の定義》……定義……定義……。このコーナーでは、皆さんの考える嘘の定義を紹介します。嘘って何? ということですね。
 まず、コールしてから、投稿を紹介しますよ。では、最初の定義。ヒアウィゴー。
 嘘ってなあに? 「自分を守るもの」。なるほどね。これ、わかるわかる。
 でもさぁ、自分を守るって、何? 自分って、そんなに守らなきゃいけないほど大切なもの? なんて言うと、どうですか、クールに聞こえませんかね。はーい、サカキも、自分は大切です。どれだけでも嘘ついて、ありとあらゆる手段を醜いくらいに使ってでも、守りたいですね。
 自分以外にもっと守りたい人がいる、というリスナーの方、挙手! はい、手が挙がりましたね。じゃあ、サカキの考えを言っておく。自分より守りたい人がいるのなら、その人を徹底的に守ってあげればいい。ただし、その人に気付かれないように、だ。本人に向かって、「君を守ってあげたい」なんて言語道断。ああ、もう言っちゃった奴、ご愁傷様。サカキ理論だとね、言った瞬間、もうその人を守ることに関して手を抜いちゃうんだよ。言われた人は、ま、たぶん感激するだろう。「ステキ!」なんて最高のスマイルをくれるかもしれない。ただ、そうしたら、君はもう満足してしまうんでないかい。実際に守るところまでいかなくなる。守るなら、縁の下だ。陰に留まれ。以上、サカキ理論。信じなくってOKだ。俺が実践しているか? それは、秘密秘密。まあ……言わずには、いられないよねぇ。
 次。嘘ってなあに? 「棚の奥のハチミツ」。……ずいぶん具体的に来たね。この人、棚にハチミツを隠しているんでしょうか。誰に隠しているのかな、奥さんかな? こういう方は、「この奥、何があるの?」「ほら、この前の佐藤の結婚式でさ、引き出物にもらった皿だよ」なんて嘘をついていそうですね。違うか。
 どんなハチミツなんでしょうねぇ、気になりますねぇ。だって、わざわざ嘘をついてまで隠そうとするんですよ。超絶に、天国に上っちゃうほどおいしいハチミツなのかな。ああ、もしもそうなら、割り箸の先にちょっとつけたやつでいいから、ぺろりとなめてみたい。
 あっ、あっ、そうか。ごめん、俺、ぼけていた。これ、比喩なんだわ。本当のハチミツじゃない、そりゃそうだよね。何を表しているんだろう。どう思う?
 ハチミツのイメージを考えてみようか。甘くて、どろりとしていて、つやめいていて……でも、暗い光を内に宿している……ああ、これは切ないね。あの、口にべっとり残る甘みまで愛おしく思えてくる。ハチミツって何だろう。素敵。素敵だけど、もしかしたら、道義的には許されないものなのかもね。そうでなかったら、どうしてあんな風に重く光れると思う?
 もしも、勝手なことを言っていたらごめんなさい。ただ、この「棚の奥のハチミツ」と書いた方へ。……俺は、あなたが幸せになることを祈っています。本当は、全ての人の幸せを願えればいいんだけど、それってできないんだよね。絶対に、ないんだ。そして、俺の考えていることが正しければ、きっと世の中の多くはあなたの敵に回る。だから、せめて俺は、あなたの味方でありたい。あなたを応援したい。そう思います。俺が、そういう人にいてほしい、と思うから。
 はい、俺の想像話でずいぶん話が長くなっちゃいましたね。妄想かな。妄想を申そう。はい、今のなし。えっと、時間なくなったかな、あと一つだけいきましょう。
 嘘ってなあに? 「今は会心、後で後悔」。えっと、たぶん、これを聴いている人の何人かはツッコミたくなったんじゃないかな。じゃあ、声をそろえて言いますよ、はい、後悔ってのは後で悔やむから後悔なんだ! 俺もね、医者に行って「ちょっと頭痛が痛くて……」なんて言ったことありますけどね。しかも、言い直せないんですよね、実際使ってしまうと。言った瞬間後悔しているのにね。あ、後悔。この使い方は合ってる? 合ってるかな? OK。
 そうだね、嘘はうまくつければやったって思うけど、後になったらそんなものつかなきゃ良かったって思う。そんなものだよね。ただ、俺はそれが嘘の全てだとは思わない。全部の嘘が後から悔やまれるものだったら、世間ってきっともっと健全だよ。後悔されない嘘も、絶対にあるんだ。ただ、それが悪いものばかりかっていったらそうでもない。リスナーのみんなにも、ああ、あの嘘は幸せを運んでくれた、と思う嘘がきっとあると思うんだ。ないって? じゃあ、きっと君を大切に思ってくれている人がついてくれた嘘があったんだよ。こっそり、感謝しておこう。

 お送りしてきたのは、パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト。とうとう、最後のコーナーです。
 あっ、最後で気付いた。音楽。そう、音楽が足りなかったんだ。ここのコーナーは、ちょっと哀愁漂う音楽をかけてみようかな。えっと……え、あ、そうか。今、CDかけられないんだ。ごめんなさい、今のなし。DJって、音楽かけなきゃいけないですよね。パーソナリティもそうですか? だとしたら……俺って誰? もういいです、パーソナリティで。今さら変えられないって。
《懺悔の時間》……時間……時間……。誰でも、嘘をついたことがあるよね。今日ついたって人も、多いんじゃないかな。それはどうして? そして、嘘をつかれた人。君はそれが嘘だって気がついたかい? それは……悲しい? どうして? 本当のことって、そんなに大事?
 嘘をついて後悔した人に、懺悔のチャンスを与えます。あ、そうそう、プレゼント・クイズのこと、覚えていますか。俺も今、嘘をついていますからね。注意深く聴いてくださいよ。では、ヒアウィゴー。
 最初の方。「『病院に寄ってから会社に行く』と連絡したが、実は寝坊しただけでした。ごめんなさい」。はい、この方、大丈夫です、会社にはちゃんとばれていますから。オトナ用語では、病院に寄るイコール寝坊だと思って間違いない。サカキも昼間は会社に通っている身だから、よくわかるよ。この人と同じ嘘をついたことがあるかって? それに関しては、ノーコメント。
 次です。「今日消印有効の懸賞ハガキを家族から預かったのに、出し忘れた。家族には『出した』と嘘を言ってしまった」。ああ、ありますね、これも。とってもばれにくい種類の嘘ですよね。何の音沙汰もなくても、抽選に当たらなかっただけだと思われる。もし投函していても、結局当たらなかったかもしれない。でも、投稿者の方は、気に病んじゃったんでしょうね。いいですよ、サカキが責任を持って許します。お前が何の責任を取れるんだ、って言われそうですね。
 この二つは、自分の失敗をごまかすための嘘ですね。さっきの定義であった、嘘とは「自分を守ること」というのに当てはまるかもしれない。嘘っていうのは確かに、人を守れるだけの力を秘めている。ただそれはとっても脆い剣で、うまく使わないと自分や他の人たちを傷つけることになっちゃうんだよね。俺、これを言っていて、すっごく胸が痛い。俺は、今、誰を傷つけているのかなぁ? そう考えると、怖いよ。喋れなくなりそうだ。今すぐ、この口にガムテープでも貼り付けてやりたい。でも、ここまで来たんだから、引き下がれないよね。
 ちょっと毛色の違うこんなのもありますね。「『あなたの誕生日は一緒に過ごせる』と言っていたのに、嘘になってしまいました。本当にごめんなさい」。はいはい。きっと仲良いんでしょうね、お幸せに。まあね、これだけ聞くと、好きにしてくれ、なんて言いたくなるけれど、もしかしたら本人たちにとっては、重大なことだったのかもしれない。たとえば、この方々が恋人同士で、その日にプロポーズする気だったとしたら? この、望まずして嘘になってしまった嘘は、非常に罪深いものになる。想像しようとすれば、どこまででも悪くなるね。
 懺悔ですから、たくさん紹介したいと思います。「お酒を飲んだことがばれて、お母さんに怒られたとき『友達に勧められて断れなかった』と言ってしまいました。本当は、私が友達を誘ったんです。ああ、うちのお母さんが、友達のところに文句を言いに行きませんように。私が早く正直に言えばいいのに、どうしても勇気が出ません」。「仕事仲間の男性から告白されたのにびっくりして、とっさに『私も前から好きだった』と答えた。でも、本当はちょっと苦手で、これから付き合っていく自信がない。どうしよう。この嘘、嘘だったと伝えたほうが、彼を傷つけずに済むでしょうか?」。「五月病で、会社を辞めた。でも、まだ家族にも誰にも言っていない。出勤するふりを続けている。給料も出ていないから、この嘘はもうすぐばれるだろう」。――――。
 あー……何だろ、俺って無力。日常は嘘でできている、って言ったのは誰でしょう。答え、俺。今考えた。日常ならさぁ、こんなに苦しまなくっていいじゃないか。あのね、もっとあるの。もっともっと。目は通した。駄目だ、これ以上俺の口では読めない。どうして、たかがラジオ番組にこんなに深刻なこと送ってくるわけ? 誰かに言わないとつらいから? 誰にも言えない嘘を抱えている人も、たくさんいるんだろうね。ああ、やっぱりもっと読めば良かったのか。俺にできるのは、懺悔してもらうことだけ。俺は、懺悔した皆さんを許します。何の責任もないところで言うけれど、でも、俺は皆さんの嘘を許す。これが、どうかほんのわずかでも、心の救いになりますように。
(2006.03.18)

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