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パーソナリティ・サカキのフルムーンナイト 01
The Full Moon Night by Personality Sakaki -1-

 はい、こんばんは。そして、はじめまして。あー、あー、マイクテスト? こういうのって、どうやればいいんだろうね。よくわからない。
 はい、どうも、こんばんは。俺の名前は、うーん、じゃあ、サカキにしよう。サカキって、すぐ近くにある居酒屋の名前。今こうやって喋る前に、一人でちょっと食べてきました。お酒? 一口だけね。あそこのイカゲソ揚げは最高です。ちょっとレモンをしぼるのがオススメ。ただ、失敗には気をつけて。俺はさっき、しぼるときにレモンの種がぽろっと落ちたのに気付かないで、イカと一緒に思いっきり噛んじゃいました。がりぃ、って。不意打ちだと痛いんですよ。一瞬わからないんですよね、砕けたのが、種なのか、それとも俺の歯なのか。
 お聴きの皆さん、ごめんなさいねぇ、こんなんで。DJって初めてなんですよ、俺。あ、パーソナリティ? パーソナリティって言うのかな。うん。パーソナリティ・サカキです。うっわ、恥ずかしいなぁ。ちゃんと、聞こえています? 俺にとって、あるいはお聴きの皆さんにとって、きちんと聞こえるのと、雑音だらけで聞こえないのと、どっちがいいのかはわかりません。でも残念ながらこの声はクリアに届いていることと思います。今時の機械、優秀優秀。
 えーっと、ちょっとはラジオらしくいきましょうか。この番組のテーマを発表します。今日のテーマは《嘘》。あ、これ、エコーかけたいね。嘘……嘘……嘘……ってな感じで。ごめんなさい、エコーをかけられる機材がありません。ラジオで喋るのも初めてなんです、俺。えーと、今日は、嘘にまつわるエピソードをね、紹介していきたいと思います。もっと楽しげなテーマなかったのかなぁ。でも、俺、立場弱いの。選択権なし。
 そして、番組の最初に、プレゼント・クイズのお知らせ。あ、ここもエコーが欲しかった。ためしに、口で言ってみようかな? プレゼント・クーイズ……クーイズ……クーイズ……。寒気がした人、ごめんなさい。明日、あなたの周りで風邪が流行り出したら、それは俺が悪い。
 今日のテーマは《嘘》ということなので、こうしましょう。俺がこの番組で嘘をつきます。それが何なのかを当ててください。正解は番組の最後で、特別に発表しちゃうよ。注目のプレゼントは、じゃじゃじゃん、ああ、こういうアタック音も出せないから、口で言いますよ。えー、プレゼントは、じゃじゃじゃん、俺からの愛を込めたキッス……キッス……キッス……。当選者の方には、ちゃあんと拒否権も添えてプレゼントいたしますから、ご心配なく。ただ、本当に拒否されたら、俺、泣いちゃうかもね。
 それでは……あ、番組名、言ってない? えーと、どうしよう。実は、決めてないんです、まだ。もうね、完璧な見切り発車。「見切ったぜ!」って言うと何となく格好良いし、すごく強そうでしょう。おんなじ言葉のはずなのに、見切り発車ってものは、どうしてこんなに情けないんでしょうね。
 えーと、名前決めました。ものの五秒。がんばった、俺。それでは、パーソナリティ・サカキの、フルムーンナーイト……ナーイト……ナーイト……。このセンスへの疑問、質問、苦情は一切受け付けておりません。でも、今日は本当に、満月がきれいなようですよ、天気予報で言っていました。空をご覧ください。ああ、でも、恋人たちの夜はカーテンを閉めたままで更けていくものなのかな?
 俺も一所懸命、あなたの素敵な夜を演出させていただきます。うっ、気障な寒波襲来中。ごめんなさい、あんまり喋らないようにします。あっ、駄目だ、俺が喋らなかったらただの沈黙の時間じゃないか。でも、格好良いな、沈黙の時間、って。やってみる? ラジオの前、じっと沈黙。悪くないと思うよ。その間、あなたなら何をする? ……ああ、駄目だ。もう余計なことは喋りません。約束。じゃないと、番組終わる頃には怒涛の自己嫌悪だよ、俺。

 それでは、最初のコーナー、いってみましょう。《えーっ、嘘でしょう?》……でしょう……でしょう……。ここでは、身の周りで起こった「嘘!」と疑っちゃうような出来事を紹介していきます。嘘か本当かは、聴いたあなたの判断にお任せします。ヒアウィゴー。
 では、最初のエピソード。ちゃらん。「母が『今日の夕飯はステーキよ』と言うから楽しみにしていたのに、出てきたのはメンチカツ。それを指摘すると、母は心底面食らったように『えっ、これってステーキじゃないの?』。母は、生まれてから四十七年間、ずっとメンチカツのことをステーキだと思っていたらしいです」。
 うん、これはね、エピソードを寄せてくれた人、聞いてくださいよ。これは、お母さんの嘘だと思って間違いない。さっき、あなたの判断にお任せします、なんて言ったけど、これ例外。嘘。決定。ステーキ肉が、思いの外高かったんだろうね。メンチカツでごまかそうとたくらんだんでしょう。
 さあ、ここからが君の腕の見せ所だよ。これが嘘だとして、君はどうする? お母さんを責めるかい? そうすれば、明日の夕食こそ本物のステーキにありつけるかもしれないね。でも、それで得られるものは何だい? ああ、もちろんステーキは食べられるだろう。でも、お母さんからはどう思われるかな。「かわいくない子だね」なんて心の中で言われちゃうかもしれないよ。
 ここはテクニックとしてね、ぜひ、君のお小遣いをはたいてステーキ肉を買ってきちゃおう! で、お母さんに「これがステーキだよ」って教えてあげよう。そうすれば、お母さん感激、君のことをぎゅっと抱きしめてくれるかもしれないね。そしていつか、君が買ってきたものより一段か二段上質のステーキを食べさせてもらえるだろう。
 お母さんからの愛情、そしていいお肉を手に入れるためにも、将来への投資と思ってステーキ肉を買ってこよう。もっとも、お母さんが調子に乗って、今度は「これってキャビアじゃないの?」なんて言い出すようなら、親子の愛情そっちのけ、ケンカしちゃえ。
 次いきましょう。ちゃらん。「夜、酒場の並ぶ道を歩いていたら、アニメみたいな、いわゆるフリフリのドレスをまとった人を発見。すごいなぁ、と思って顔を見ると、何と男! 酔いもいっぺんに冷めちゃいました」だそうです。いやあ、これ、気付いたときは怖かったでしょうね。相手を威嚇するのにね、怖い顔のメイクなんてのもいいけど、こういう格好も怖いよね。プロレスラーで男性の方、衣装の候補としてどうですか。
 このエピソードには続きがありまして、この方、ドレスの男性に声をかけてみたんだそうなんです。すると、「男でも幸せになれるの?」という意味のことをぽつりと口に出されたそうですよ。変な質問だよね。投稿者の方、答えられましたか? 俺はきちんと答えられないけれど、ただ、幸せになれるとは信じたいね。俺も男だから。これって答えにならない?
 さあ、このコーナー最後のエピソードはこちら。ちゃらん。「ユーフォーを見た!」。ええ、つまらないですね。ただ、ちょっと気になったのがですね、この方、「ユーフォー」ってカタカナで書いているんですよ。「ユーフォー」。何かね、がっくりと膝の力が抜けませんか。アルファベットで「UFO」って書くと、かっちりしたイメージだし、「未確認飛行物体」ならもっと硬い。しかし、「ユーフォー」ってね。「フォー」っていう、鼻から空気が抜けていく感じが、どう言うかな、台無し。
 ここで、ちょっと気障なことを一つ。「ユーフォー」は「フォーユー」からできている。意味わかんないね。でも、これを言えたのは、「ユーフォー」がカタカナだったおかげ。「UFO」でも「未確認飛行物体」でも、あなたのために、とはならなかった。センキュー、センキュー。
(2006.03.18)

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