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これもまた夢の話
Also a dream
小学校に向かう道すがら、しかし、どうも間に合わないかもしれない。
「あなたの卒業した小学校ですか」
「いいえ」
私は短く答えて、助手席でうつむいた。男はハンドルを握ったまま前を見つめている。
「ここを左ですね」
「はい」
「何をするのですか」
私は答えない。
「急ぎましょう」
男は乱暴にハンドルを左に切った。
一方通行の道をまっすぐに進んで、目的の場所に辿り着いた。
「見覚えがありますか」
「はい」
「懐かしいでしょう」
「そうかもしれません」
それぞれのドアから車を降りた。私は新聞紙の包みを腕に抱えている。
児童玄関は、白かったが、万遍なく薄汚れている。併設されている職員玄関に足を踏み入れた。
「あ……」
「どうしました」
「授業が始まっていますね」
「ああ、本当だ」
男は廊下の奥を覗き込んだ。
「それなら、急ぎましょう」
「いえ」
意外そうに男が私を見る。
「……いいんです」
「間に合いませんか」
「もう、いいんです」
小さくなった私を見下ろして、男は無表情だ。
「でも、私、これがあるのです」
私の手の中の包みを、男が見る。
「ニラですか」
「はい」
ニラには、畑からたった今採ってきたように土がついていた。
「だしをとるのには、使えるでしょう」
私がそう言うと、男はお湯の沸いた土鍋を用意してくれた。
新聞紙から取り出したニラを、私は一気に鍋に入れた。お湯がほんのりと木の実のような色に染まる。
私と男は、隣り合って立ったまま、もうもうと立ち上る湯気をずっと見ていた。
(何処かプロロオグのやうだ)
(2006.10.14)
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