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ある呪文
want to chant a spell

「悪魔を呼び出す秘法を知ったんだよ」
 三村は、血走った目で俺に告げた。
「魂と引き換えに、願い事を一つ叶えてもらえる。そうしたら、俺は『いくつでも願いを叶える能力がほしい』と頼むんだ。その力を使えば、あるいは魂をとられないようにできるかもしれないしな。ところが、材料が手に入らない。薬品会社にいるお前なら、何とかならないか」
 俺は、秘法を記した紙を受け取って、目を通した。
「手に入れられるか? うまくやってくれたら、お前の願いも叶えてやるよ」
「材料は集められるかもしれないが、悪魔を呼び出すのは無理だな。これをよく見ろよ」
 俺は紙の最後を指さした。「この呪文を唱えなさい」として、奇妙な記号がずらずらと並んでいる。
「君がこの秘法をどこから手に入れたか知らないが、この紙の文章は日本語で書かれている。ところが、呪文だけは見たこともない言語だ。きっと、今までこの紙を見てきた奴は、誰も読めなかったんだな。だから、材料はそろえられても、呪文は唱えられない」
「そうか……」
 肩を落としている三村に、俺はこんな提案をした。
「こうすればどうだ。この呪文の言葉をあちこちに広めるんだ。そして、読める人がいたら俺たちに連絡してもらって、代わりに願いを一つ叶えてやる。いろいろな人に尋ねれば、いつかわかるさ」
 三村は目を輝かせた。
 さっそく、俺たちは呪文の部分だけを大量にコピーして、多くの知人、特に外国人や外国に関わりの深い人に配って回った。この文字を読めたら願いが叶うんだよ、と言って。
 以来数十年、呪文の読み方は今でもわからないが、俺たちの配った紙は幸運の手紙として世界中に広まっている。
(2005.01.03/2006.01.29改)

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